大阪の現役調停委員に聞く。調停での思いを伝える難しさ

調停での意思疎通の難しさ

話し合いのスタート時点から、立場が対等でない
調停は、こんな呼び出し状から始まります。
「何月何日何時に、家庭裁判所に来るように――」
この文面が突然届いたら、あなたはどんな気分になりますか?


裁判所から呼び出され、自分がまるで被告人になったような、嫌な気分で調停に臨むでしょう。そして、申立人は相手を訴えたような意識で、鼻息荒く調停に乗り込んで来ます。
調停委員は「どちらかが訴えた、訴えられたというわけではなく、お二人の立場は対等です」と言いますが、最初に刻みつけられた当事者の微妙な感情は、なかなか拭えないものです。調停の場では、夫婦が対等な立場であることが大切なのに、初めから既にとても難しいのです。


調停委員は、夫婦の間に入る“邪魔者”?
一件の調停には、男女ペアで2名の調停委員が付きます。私たちも人間ですから、誰と組んでもパーフェクトに仕事ができるという訳ではありません。ここだけの話、当事者の方には非常に申し訳ないですが、調停委員同士の相性が悪いと、調停も上手くいかないことが多いんです。


また、調停委員と当事者との相性というのも当然あります。どれだけ言葉を尽くして説明したとしても、調停委員に気持ちが通じていないと、理解してもらうのは難しい。でも、「合わない」とか「イヤだから」とかの理由では、調停委員を変更することはできません。


夫婦の間を橋渡しするはずの調停委員が、スムーズな話し合いを邪魔する可能性もあるのです。離婚問題に何人もが関わる調停では、特有のデメリットもあることを、覚えておいていただきたいと思います。


対面でも書面でも、意思を伝えるのは至難の業
男性の方は「直接話が聞きたいから、とりあえず会わせてくれ」とよく言われます。私たち調停委員を介してることが、すごくもどかしいのでしょう。基本は夫婦別席ですが、当事者同士がOKであれば、同席も可能です。旦那さんのご希望から同席となったあるご夫婦のケースですが、20分という限られた時間の中で、旦那さんは一生懸命自分の思いを伝えようと苦労されたにもかかわらず、空回りするばかりで、奥さんにはイマイチ伝わらず・・・。思いを相手の心に届けることって、本当に難しいですね。


また調停では、自分の言い分を「主張書面」に起こして、調停委員を通じて相手に渡すことができます。しかし、その書面は一方的な長文になったり、ついつい弁解がましくなりがちです。嘘みたいな話ですが、「お前が悪いから俺が浮気したんだ」という文脈になっていたり。これでは逆効果ですよね。書面の場合、「婚姻費用(生活費)は、毎月○○日までに妻の口座へ振り込みます」など、離婚の条件をよっぽど具体的に書かない限り、効果は薄いと言えます。


離婚という難題を抱えながら、第三者も入る調停の場で、お互いの意思を正確に伝えることが、いかに難しいか、少し分かっていただけたでしょうか?