大阪の現役調停委員に聞く。離婚調停の現実

調停の現実

 日本の離婚の約9割が当事者間同士が話し合って離婚を決める「協議離婚」ですが、協議で決着の付かなかった、もしくは決着が付けられない夫婦が、家庭裁判所の調停を経て離婚するのが、調停離婚」です。
裁判官が1名と、私のような調停委員で調停委員会を構成し、一つ一つの事案に対処しますが、普通は調停委員2名でお互いの言い分を聞き、離婚の条件をつめていきます。
2009年の1年間で、大阪家庭裁判所に申し立てられた調停離婚は約9,800件。これは、過去最高の件数です。急増する離婚調停に携わる中で気になるのが、「自分の問題と向き合えない人」が明らかに増えていること。



「もう、旦那の顔を見るのもイヤ」
「あんな女とは、口もききたくない」
そう言って、相手と向き合わないご夫婦がたくさんいらっしゃいます。でも実は、相手に向き合ってないように見えて、自分に向き合ってないんですよね。


そういう人は、調停に入っていることを理由にして、相手からの働きかけに対して「一切何もしません」というふうに拒否してしまう。子どもにも会わせないし、話し合いにも応じないし、手紙も受け取らない。「離婚」に関わることをすべて、シャットアウトしてしまっている。これは、調停を口実にして、自分の嫌な問題から逃げてることに他なりません。



調停に来られるご夫婦は、両方、もしくはどちらかが、こんな風に自分の問題と向き合えないケースがほとんど。
私の感覚では、自分の思いを表現したり、相手に伝えるのが苦手な人、例えば、「思ってることは、言わなくても以心伝心で分かるだろ!」みたいな、一見強そうに見えて、コミュニケーションがうまく取れないタイプの方が多いですね。


話は変わりますが、私たち調停委員は、離婚に至った経緯やその理由について、双方から話を聞きます。しかし、実際、その語られた内容が真実かどうかも含め、ご夫婦の事情は100%分かりません。まさに“真実は藪の中”です。こんなことを言うと身も蓋もありませんが、調停の場にあっても、結局は当事者同士の問題なんです。


調停で語られる話というのは、ご夫婦それぞれからの都合のいい情報だけです。伺った話を総合して描くご夫婦の姿は、おそらく現実とはものすごくかけ離れているんだと思います。「離婚」という人生の大きな選択を、そんな不確実なものの上で決めてしまっていいのでしょうか。そして、たった2~3回の調停で、長年抱えてきた二人の問題がスッキリ解決するのでしょうか。答えは、残念ながら、「NO」と言わざるを得ないケースが多いのが現実です。